駿河台大学 法学部法律学科 教授 長谷川 裕寿 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!事実と合致していても「ウソ」!?
ある辞書には、ウソとは「事実とは異なる言葉」とあります。それでは、記憶通りに証言しても、それが証拠調べで明らかになった「事実」と異なる場合、「ウソを言った」と非難されるべきでしょうか。偽証として非難されるべき「ウソ」の意味を考察します。
条文における「人」の意味
偽証罪は何のためにあるのか
裁判官はウソをどう判断する?
事実と合致していても「ウソ」!?
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう刑法解釈を体験してみよう ~偽証罪に問われる「ウソ」とは?~
法律の解釈には幅がある!?法律には憲法、民法、商法、刑法などがあり、私たちが社会生活を円滑に送れるように機能しています。法律の中で犯罪の成立要件や刑罰に関して規定しているものが「刑法」です。裁判官は刑法に則り、判例、すなわちこれまでの法律的判断を考慮して、判決を言い渡します。 こうした判決の過程には、わずかな「揺るぎ」もないように思えます。しかし、実際には1つひとつの事件は、微妙に違っていますし、時代や国民感情によって刑法の解釈には幅が生まれます。1つの事案に、正反対の解釈が成り立つことさえあるのです。「偽証罪」の2つの解釈例えば、「偽証罪」は「うその証言をすると罪になる」という法律です。では、「うそ」とはなんでしょうか。ある証人が、Aが逃げていくのを記憶していたのに、裁判では「逃げたのはB」と証言し、実際に逃げたのはAではなくBであることが明らかになったとしましょう。この場合、証人は偽証罪に問われるのでしょうか。現在の裁判では、「記憶通りに述べることが証人の役割」とされることが多く、この証人は偽証罪に問われる可能性があります。 しかし、これに異を唱える解釈もあります。「偽証罪は、裁判所の判断を誤らせないためのものであり、記憶と違う証言をしたとしても、裁判所の判断を誤らせていない証言を偽証とは言えない」という見解です。同じ「偽証罪」という法律でも、正反対の解釈が成り立つのです。国民にとってよりよい解釈をこのように、法律には解釈の余地があります。言葉の意味する内容が、時代によって少しずつ変わってくることも珍しくありません。刑法の研究では、どのような解釈がよりふさわしく、より妥当であるのかを考察することが、課題の1つです。特に刑法は、人間の自由や、時には生命を制限したり奪ったりするものですから、影響は甚大です。 国民が社会生活を安定的に送るためには、どんな解釈がよりよいのかを常に研究し、社会に提示していくことが、刑法の研究には求められているのです。先生からのメッセージ
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