富山大学 工学部工学科 知能情報工学コース 教授 玉木 潔 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!光の不思議な性質を用いた盗聴不可能な暗号
私たちは実感できませんが、光は1粒、2粒というように数えることができます。この光の粒には私たちの常識をはるかに超えた不思議な性質があります。日常とかけ離れたこの性質を上手く使うと、盗聴不可能な暗号が作れ、日常生活で役に立つことを紹介します。
通信における暗号の例
素因数分解
量子暗号
光の不思議な性質を用いた盗聴不可能な暗号
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう量子暗号は盗聴不可能な最強の暗号化技術!
数学による暗号の安全性は完全ではないネットショッピングなどの際に送信するクレジットカードの番号や個人情報は、通信路に潜むハッカーなどに盗聴される危険があります。このため、ネット上では暗号を使って情報を守っています。暗号は、数学の問題を解く困難さを利用しており、例えば素因数分解の難しさなどが主に用いられます。 しかし、このような数学暗号の安全性は完全ではありません。素因数分解の場合だと、素因数分解する数の桁が大きくなると、数百台の端末を使って何年もかけて計算してやっと答えが得られるレベルなので、実際に暗号を解くことは難しいのですが、ハッカーが非常に高度な数学的ノウハウや計算機を持っていたりすると解かれてしまうという欠点があります。世界各国で進められる量子暗号の研究1994年に米国の科学者が、量子計算機という新たな原理を用いた計算機を使うと、素因数分解などは短時間で解け、したがって多くの数学暗号が解読できることを発見しました。しかし、1つのものが同時に2カ所に存在できたり、情報のコピーができない、などの量子の性質を利用した「量子暗号」を使えば、原理的に盗聴は不可能な安心な通信が可能になります。 量子暗号の研究はすでに世界各国が取り組んでいます。中国では北京と上海、米国はワシントンとオハイオを結んでネットワーク間で実証実験を行っており、英国やEUでも巨大な資金を投じて開発が進められています。日本でも総務省所轄の情報通信研究機構などが中心となって実証実験を行っています。課題は装置からの情報漏えいや誤作動量子暗号は雑音などが全くない装置で行えば安全です。しかし課題は、装置そのものから思わぬ方法で情報が漏れたり、雑音の影響で誤作動する可能性があり、実際の装置でどのように安全性を保証するか?ということです。この実際の装置の安全性保証の研究は現在盛んに行われており、この研究が進展すれば、情報通信ネットワークの安全性は今までとは比べ物にならないほど向上するでしょう。先生からのメッセージ
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