東京海洋大学 海洋資源環境学部海洋環境科学科 准教授 村瀬 弘人 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!鯨 その謎につつまれた生態に迫る
世界最大の動物として知られるシロナガスクジラ、また、水族館で親しまれているハンドウイルカなど、数多くの鯨類が生息していますが、海で一生を過ごす鯨類の生態は多くの謎に包まれています。最新の科学手法を駆使し、その謎に迫る研究を紹介します。
この学問には感動やワクワクがありますか?
なぜこの学問を究めたいと思ったのですか?
この学問を究めるのに向いているのはどんな人ですか?
鯨 その謎につつまれた生態に迫る
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみようまだまだ謎多きクジラの生態
クジラはどこで何をしている?クジラは長い年月をかけて形態を変え、水中生活に適応しました。現在、世界にはイルカも含め、約90種のクジラがいます。海に生きるクジラの研究は難しく、その生態に関しては明らかになっていないことがたくさんあります。 クジラの生態調査で基本となるのは、船で海に出て、人間の目でクジラの数や種類を確認する目視調査です。そこから得られたデータと統計モデルを組み合わせて、その海域にいるクジラの頭数を推定します。今ではクジラに小型の衛星発信機を取り付けて、人工衛星を通じて回遊経路を確認することも可能になりました。ただし、目視調査は天候の関係から夏場にしか行えませんし、クジラに付けた発信機も長期間の遊泳に耐えられず、クジラがどこで何をしているのかは謎が多いのです。進化する研究手法一方、クジラの研究手法は、他分野の技術の進歩を受けてどんどん発達しています。例えば、人工衛星を通じて海水温などの環境データを得られるようになってからは、従来の目視調査などのデータと組み合わせてクジラの分布図を作成する研究も盛んになってきました。また、最近では目視調査にドローンを活用したり、AI(人工知能)技術の1つである機械学習をクジラの分布モデルの推定に活用したりといったことも行われるようになってきています。また、クジラに取り付ける行動記録装置が小型化してきて、クジラの詳細な行動もわかってきました。こうした技術的な進歩により、従来の目視調査だけではわからなかったこと、例えばクジラの高い潜水能力や、時間帯によって遊泳の深度が違うことなどが明らかになりました。楽していっぱい食べたい?クジラとエサの関係を調べることもクジラの生態を知る上で大切です。海の中のエサの量と胃の中のエサの量を比べたところ、クジラは浅いところにいる、重さあたりのカロリーの高い生き物を好んで食べる傾向にあることがわかりました。食べるための労力を減らして高カロリーを得る、クジラは「コスパ」の良い食事をしている可能性があるのです。先生からのメッセージ
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