公立鳥取環境大学 環境学部環境学科 准教授 角野 貴信 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!土壌の劣化を防ぐには?生産基盤の持続可能性を考える
自然の循環システムの一部である土壌は、人間の影響を取り込んでさらに変化します。地球温暖化や土壌侵食といった大きなインパクトに対しても、土壌がその解決のカギとなることが明らかになりつつあります。土壌の現在と未来を、皆さんと一緒に考えます。
この学問は社会・人をどのように変えますか?
この学問を究めると決めた昔の自分に声をかけられるのなら何を伝えますか?
この学問を究めるのに向いているのはどんな人ですか?
土壌の劣化を防ぐには?生産基盤の持続可能性を考える
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう生命を支える「土壌」と「環境」との関係を考える
森は循環している「土」と「土壌」は違います。土は「服に土がついた」などの素材としての性格を持ったものですが、土壌は自然の一部という意味です。石と地層の違いを考えるとわかりやすいかもしれません。 自然の一部である土壌が森の中にある場合、まず樹木が土壌の上に落とした葉や枝を微生物が分解します。土の中にはスプーン1杯で何億もの微生物がいて、分解する時に二酸化炭素と腐植(腐葉土)を生み出します。これは「土が呼吸をしている」と言われる現象です。一方、樹木は二酸化炭素と、腐植が分解されて出てきた養分を吸収して成長し、新しい葉や枝をつけていきます。やがて、また樹木は葉を落とします。森はこの循環を長年にわたって繰り返しているのです。腐植が減り二酸化炭素が増えるしかし、人間の手が加わると、森の循環が変わってしまいます。まず木を切り倒して畑にして、食料となる作物を植えます。栽培する植物は森の樹木に比べて小型であることが多いですから、落ちる葉は少なくなります。微生物は葉を分解し二酸化炭素をつくりますが、足りないので腐植も分解してしまいます。このようにして腐植が減り、二酸化炭素が大気の中で増えて、地球温暖化などを引き起こす原因のひとつになっています。砂漠化のメカニズム水田では、かつては米を収穫した後の稲わらや雑草を田んぼの土壌に混ぜ込んで土に戻して栄養分にしていましたが、稲わらも収穫時に刈って取り去ってしまうと、土壌がやせていきます。また、草原でも、羊毛を多く生産しようとしてヒツジをあまりにも多く放牧すると、草が食べ尽くされてしまい、土壌の中に腐植が蓄積されなくなります。そうなると、やがて土壌が劣化を起こして、風によって土や砂が飛ばされていきます。「砂漠化」と言われる現象です。 春になると中国から日本にまで悪影響を及ぼしているといわれている黄砂の一部は、このようなメカニズムで生み出されたと考えられています。このように土壌と環境は密接な関係にあるのです。先生からのメッセージ
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