東京女子大学 現代教養学部心理・コミュニケーション学科 心理学専攻 教授 田中 章浩 先生
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30分のミニ講義を聴講しよう!顔と声の多感覚コミュニケーション
誰かと会話するときには、相手の言葉だけではなく、顔の表情や声色など複数の感覚情報を利用して感情を読み取ることで、円滑なコミュニケーションが実現しています。こうした「多感覚コミュニケーション」について、認知心理学の視点から研究を紹介します。
錯覚は視覚だけではない!?
他者の感情を知る手がかり~表情編~
表情の伝え方は国によってそれぞれ
顔と声の多感覚コミュニケーション
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみようAI発展のカギになる? 他者の感情の理解を支える「多感覚知覚」
日本人と欧米人では非言語情報のとらえ方が違う?地下鉄のホームなど騒音のする場所で友だちと話していると、無意識のうちに相手の口元を見ていることがあるでしょう。これは聴覚だけではなく、視覚を組み合わせて発言を聞き取ろうとしているからです。このように、複数の感覚を組み合わせて脳の中で結びつけることを「多感覚知覚」といいます。 コミュニケーションにおいて、人間は大きく2つの情報をやりとりしています。ひとつはセリフのような言語情報、もうひとつは声色や表情など、多感覚で受け取る非言語情報です。非言語情報の中でも声色と表情のどちらを重視するかは、国によって違いが見られます。例えば、声色と表情が矛盾する場面に遭遇した場合、日本人は声色で判断し、欧米人は表情で判断する、という実験結果が出ました。年齢によって敏感な感覚は異なる感情を読み取る力には、年齢によって違いが見られます。声色と表情が矛盾している場合、5~6歳の子どもは主に表情で判断し、7~8歳以降になると徐々に声色も重視するようになることがわかっています。乳児期には聴覚が先に発達した後に視覚が追いつくように発達し、児童期になると再び聴覚が視覚に追いつくように発達する、というように、感覚は互いに競い合いながら発達していきます。ですから、それぞれの感覚が敏感な時期にその能力を伸ばすような教育を行うと、効率よく感覚を発達させることができるかもしれません。多感覚知覚はAI発展の可能性を秘めている多感覚知覚の研究結果を応用して、AI(人工知能)が人間の心を読み取れるようにする研究も行われています。AIに視覚と聴覚に関する情報を別々に認識させる手法はすでに行われています。しかし人間のように、視覚と聴覚が矛盾する場面でそれらを結びつけて感情を推定する、という技術はあまり進んでいません。多感覚知覚の研究結果をAI開発に応用することで、人間の感情を読み取るような、より人間らしいコミュニケーションがとれるAIが実現するかもしれません。先生からのメッセージ
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