九州大学 共創学部 共創学科 教授 溝口 孝司 先生

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未来のための考古学
人が遺したモノ、人の思考や行動に影響を与えたモノに現れたパターンを研究すれば、「このような場面で人類はこのように思考し行動するだろう」という予測を引き出せる可能性があります。人類の過去から将来を展望する未来志向の考古学についてお話しします。
先生からのメッセージ
考古学は実は未来志向の学問です。人間は社会や文化、自然環境の変化に適応して、暮らしぶりを変えて生き抜いてきました。そこには時代に応じたパターンがあります。考古学は、そのようなパターンを遺跡や遺物など、ものの研究によって明らかにします。私は、そのような研究を通じて未来を展望・予測し、考古学を未来の社会に貢献する学問にしたいと思っています。
過去の出来事を調べて、新しい知識・見解を導くという意味の「温故知新」という言葉があります。あなたも一緒に、考古学を通じて、真の「温故知新」を実践しませんか。
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「未来志向の考古学」とは何だろう
考古学の役割とは
過去の遺物や痕跡から当時の暮らしぶりを復元することだけが、考古学の役割ではありません。人間は、社会や自然環境の変化に適応して、暮らしを変えながら生きてきました。その変化にはあるパターンがあります。それを明らかにするのも、考古学の役割です。もし同じような社会や自然環境が未来に出現すれば、それにどのように適応すればよいか、過去の人間のやり方から学ぶことができます。加えて考古学は、人々の対応の意味やそれに関わる世界観、また人々の感情も明らかにする術を発展させてきました。
マヤ都市文明を捨てて生き延びた人々
例えば、紀元前2000年頃から現在のメキシコを中心に誕生したマヤ文明は、干ばつによって滅びたといわれてきました。しかし、詳細な研究の進展を通じて、都市ネットワークの衰退後も人口はそれほど減っていなかったことが明らかになりました。マヤの人々は、環境変化に適応しつつ、高度な身分社会から比較的単純で平等な社会組織へと移行することで、社会として生き延びたことがわかってきたのです。
環境の激変があっても、したたかに生き方を変え社会として生き延びることが人間にできるなら、仮に現在の利便性の高い都市文明が危機にひんしても、これに立ち向かうことができるでしょう。
文明の持続可能性を維持するために
文明、特に科学技術は右肩上がりで進歩していると考えがちですが、長い歴史をみると、それは短期間の現象で、実際は波のように変化しています。また、世界各地の過去の社会は想像以上に多種多様であり、そこには、西欧文明の拡張がなければ展開していたかもしれない、産業化・都市化以外のさまざまな可能性、潜在力があったこともわかってきました。このように考えると、古い時代だけが考古学の対象ではありません。例えば、2011年の東日本大震災に対して人間がどう対応したかを記録することも、考古学の対象です。文明の持続可能性を維持していくという命題に対して、さまざまな可能性を提示することが考古学の役割と言えます。
先生からのメッセージ
考古学は実は未来志向の学問です。人間は社会や文化、自然環境の変化に適応して、暮らしぶりを変えて生き抜いてきました。そこには時代に応じたパターンがあります。考古学は、そのようなパターンを遺跡や遺物など、ものの研究によって明らかにします。私は、そのような研究を通じて未来を展望・予測し、考古学を未来の社会に貢献する学問にしたいと思っています。
過去の出来事を調べて、新しい知識・見解を導くという意味の「温故知新」という言葉があります。あなたも一緒に、考古学を通じて、真の「温故知新」を実践しませんか。
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