福岡女学院大学 人文学部 言語芸術学科 准教授 大島 一利 先生

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魔法の言葉で学ぶ西洋古典の世界
J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』の中で使われる呪文は、西洋古典を豊かに彩るラテン語に由来しています。またこの言葉は、キリシタン文化を日本にもたらしました。呪文とそのベースのラテン語を学ぶことで、グッと映画と歴史に近づけるはずです。
先生からのメッセージ
私は、キリスト教を中心に歴史や文学を研究しています。キリスト教は、西欧の歴史そのものです。
日本人も昔からキリスト教を受け入れ、その教えを深く理解しようとしてきました。また、キリスト教を題材にした、数多くの芸術作品やエンターテインメント作品があります。特に言語芸術学科で学ぶ学生たちは日本語、英語を中心とした演劇、映画、文学に触れています。キリスト教は、教養のひとつだと言うことができます。たくさんの教養を身につけるために、本学で一緒に学びましょう。
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「ハリー・ポッター」の背景にある古代ローマとキリスト教の世界
あの呪文は、古代ローマに起源があった!
「ハリー・ポッター」は、魔法使いのハリー・ポッターが両親を殺害した同じ魔法使いのヴォルデモートと戦うファンタジーで、物語には魔法を使うための呪文が数多く出てきます。多くはラテン語由来の言葉です。その中に「エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ)」という呪文があります。「パトローナム」は英語ではpatron、「後援者、保護者」という意味です。この言葉の誕生は、古代ローマ社会に起源があります。
パトロヌス・クリエンテス関係とは?
古代ローマ社会では、血縁関係のほかに道義的な人間関係が存在していました。これは保護する者(パトロヌス)と保護される者(クリエンテス)の関係で、「パトロヌス・クリエンテス関係」と呼ばれます。例えば、当時の政治家カエサルはガリア(今のフランス)のパトロヌスであり、そこに住む市民はクリエンテスでした。
一方で、征服した国に対しては属州として重い税金を課していました。また属州民が市民になることと引き換えにお金を徴収したため、パトロヌスには資金力がありました。ガリアに何か問題があると、カエサルは自分の資金でそれを解決することを求められました。一方、クリエンテスは選挙でカエサルを支持します。これは疑似家族のような強い結びつきで、この関係を裏切ることは許されなかったのです。
古代ローマの社会制度をのみ込んだキリスト教
キリスト教はこの社会制度をたくみに利用して信者を拡大しました。昔の偉大なクリスチャンである聖人にご利益(りやく)を持たせ、教会を通じてそれを市民に提供することで、新たなパトロヌス・クリエンテス関係を構築したのです。「パトローナム」が守護霊となったのにはそのためです。
西欧人でラテン語を少しでも学んだ人は、ハリー・ポッターの呪文を聞くと、自分たちの歴史を想起します。ファンタジーといっても単なる作り話ではなく、その背景には西欧の歴史の裏付けがあるのです。
先生からのメッセージ
私は、キリスト教を中心に歴史や文学を研究しています。キリスト教は、西欧の歴史そのものです。
日本人も昔からキリスト教を受け入れ、その教えを深く理解しようとしてきました。また、キリスト教を題材にした、数多くの芸術作品やエンターテインメント作品があります。特に言語芸術学科で学ぶ学生たちは日本語、英語を中心とした演劇、映画、文学に触れています。キリスト教は、教養のひとつだと言うことができます。たくさんの教養を身につけるために、本学で一緒に学びましょう。
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