島根大学 生物資源科学部生命科学科 准教授 児玉 有紀 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!ミドリゾウリムシが解き明かす細胞進化の謎
細胞内相利共生の関係にあるミドリゾウリムシとクロレラは、それぞれが単独でも生存できるため、真核細胞誕生のプロセス解明の新たなモデル生物として注目されています。ミドリゾウリムシを使って、真核細胞の誕生や進化の謎にせまる研究について解説します。
「相利共生」のいいこと
ミドリゾウリムシの共生時を解析する
ミドリゾウリムシが解き明かす細胞進化の謎
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう「ミドリゾウリムシ」からひもとく生命進化の謎
生命進化の謎を秘めた原生生物生物はどのようにして誕生し、進化したのか、その謎を解き明かす鍵は、微細な原生生物「ミドリゾウリムシ」の中にあります。ミドリゾウリムシは、淡水中に生息する真核細胞からなる単細胞生物です。消化、排泄、生殖を行い、分裂を繰り返しますが、体内に淡水性単細胞緑藻類のクロレラを「共生」させるため緑色に見えます。この細胞内共生は細胞の進化の原動力となった生命現象で、その成立の仕組みの解明が、10億~20億年前の真核細胞生物誕生の現象の解明につながると期待されているのです。ミドリゾウリムシの可能性ミドリゾウリムシはクロレラに二酸化炭素や窒素分を与え、クロレラは光合成で得た酸素や糖をミドリゾウリムシに与えて共生しています。大抵は、共生しているものを取り除くと、共生される側である宿主(しゅくしゅ)は死にますが、ミドリゾウリムシはクロレラを除去しても死なず、戻すと元の共生状態に戻ります。 また、体内にクロレラが居る時は、光さえ当てていればエサがなくても生きていけます。この性質のように、動物細胞に植物細胞を共生させて光合成能力を獲得できれば、動物を植物化する仕組みを作り出すことができるはずです。つまり、エサを食べなくても生きられる動物を作り出せる可能性があるのです。そのほか、水の浄化や二酸化炭素削減にも寄与し、ノーベル賞級の発見にゾウリムシと同じ繊毛虫のテトラヒメナが使われたこともあります。性、寿命、共生の不思議ゾウリムシは、1日に2、3回分裂し、700回分裂すると死を迎えると言われていますが、途中で性転換したり、自分の中で接合して死なないようにしたり、分裂する前(ゼロ回分裂)の状態に戻ったりします。また、十数年生き続けている細胞もあり、まだ多くの謎が解明されていません。 ゾウリムシの性や寿命、ミドリゾウリムシとクロレラの共生の関係を解き明かすことが、生命進化の謎に迫る鍵となります。環境や医療分野などへの応用も期待されており、海外からも注目されています。先生からのメッセージ
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