30分のミニ講義を聴講しよう! セラミックスで、エネルギー問題に挑む!
夜間に発電した電力を貯蔵し、昼間の電力ピーク時に使用することでエネルギー問題は解決できます。電力貯蔵用NAS電池の心臓部はセラミックスでできており、そのセラミックスの中で起こっている「イオン伝導」現象とその特殊な結晶構造について解説します。
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう セラミックスが生んだ新しい電池がエネルギー問題を解決し環境を守る

需要の少ない夜間に発電した電力を貯蔵しておき、昼間の電力ピーク時に使用できれば、発電所数を大きく減らせます。これには揚水発電や超伝導などさまざまな方法がありますが、もっとも期待されているのは蓄電池(二次電池)です。 大規模な二次電池「NAS電池」 この電力貯蔵用の電池として有力視されているのがNAS電池です。これは300℃で作動する大型の電池です。電極には金属ナトリウムと硫黄が使われており300℃では両方とも液体です。ですからこの電池の電解質は電極の液体と混ざらないように固体でないといけません。液体ナトリウムと液体硫黄の電極をしっかり分離し、電子は通さずナトリウムイオンだけを通す丈夫な固体の電解質が必要です。その条件を満たす材料はイオン伝導性セラミックスです。イオンが通りやすい結晶構造を持ち、高温にも耐える、このセラミックスの開発が、NAS電池の性能のキーとなっています。 地球環境に貢献するセラミックス NAS電池の用途はほかにもあります。近年太陽光や風力のような自然エネルギー発電が多くなってきました。しかしこれらは天候などに左右されやすく、秒単位で電流電圧が変化するため、安定な電力として利用できません。そこで、太陽光や風力で発電した電力をまずNAS電池に蓄電しておき、それから一定電圧で取り出す方法が開発されました。安定化用NAS電池を設置した風力発電所が続々と建設されています。イオン伝導性セラミックスの研究がNAS電池を生み出しました。エネルギー問題の解決と地球環境を守るために、セラミックスはますます期待されています。
高知大学
理工学部 数学物理学科
准教授 島内 理恵 先生