九州大学 工学部物質科学工学科 教授 後藤 雅宏 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!創薬工学で注射不要の世界へ挑戦
薬の開発において、痛みの少ないあるいは副作用の少ない薬物の投与方法が、患者から求められています。講義ライブでは、世の中から注射をなくすために、新たな創薬の技術を駆使して、ワクチンをシールに変換する技術を紹介します。
皮膚の中にクスリを浸透させるためには?
化粧品開発へも応用可能!
花粉症の人にとっては朗報!?
創薬工学で注射不要の世界へ挑戦
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう注射はいらない!? 薬剤を体内に入れる新たな技術
注射に代わる「経皮投与」糖尿病治療では、インシュリンを毎日数回注射しなければなりません。これは、患者にとって大きなストレスです。また、注射を繰り返すうちに皮膚が硬くなり、投与できる場所がだんだん限られてしまうという問題もあります。そこで、注射以外の投与方法が研究され、より患者の負担が少ない、皮膚に塗って薬剤を投与する「経皮投与」が注目されるようになりました。この方法が実用化されれば、患者の負担が軽くなるだけでなく、注射とは異なるため医師がいなくても薬剤投与が可能になり、医師が少ない発展途上国などでの医療支援にも役立ちます。水だと入らない。油だと壊れるでは、どのような技術的課題があるのでしょう。人間の皮膚には、水に溶けている物質だと表皮部分の小さな穴(細胞同士の隙間)から体内に入ります。ただ表皮の穴は、分子量500以下の小さい物質しか通しません。これは有害な物質を体内に取り込まないための防御機能です。インシュリンなど、よく使用されるバイオ医薬品は高分子(大きい物質)であるため、この防御機能により、ほとんど皮膚を通過できないのです。 一方、油に溶けている物質は表皮部分から、そのまま中に浸透する性質があります。だからといって薬剤を油に溶かすと、薬としての機能が失われてしまうのです。新しい技術は、まず化粧品として成功そこで薬剤が壊れないように、界面活性剤で薬剤をコーティングし、ナノレベルの大きさで油に溶かす「ソリッド・イン・オイル技術」が開発されました。まず化粧品としてこの技術が応用され、肌のシミやシワのためにビタミンCやヒアルロン酸を体内に取り込むのに、劇的な効果を発揮しました。 薬にこの技術を使用するための今後の課題は、薬剤が体内に吸収される割合をさらに上げることです。表皮を通過すると体の細胞は能動的に薬を取り込もうとします。そこでこの取り込む機能をさらに活発にさせて、吸収率を上げるという取り組みが行われています。先生からのメッセージ
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