龍谷大学 先端理工学部 応用化学課程 教授 内田 欣吾 先生

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ハスの葉やホウセンカから学ぶものづくり
ハスの葉が水滴を弾き、表面をクリーンに保つ仕組みは、表面にあるダブルラフネス構造と呼ばれる凸凹構造によります。この構造を、光応答材料を用いて作成すると、ハスの葉と同様に水滴のダンスが観察できます。こうした自然に学ぶものづくりを紹介します。
先生からのメッセージ
研究の世界では、表に出てくる結果の裏側に膨大なデータの収集と解析や数式計算があります。こうした地道な作業を繰り返していく姿勢が大切です。また、研究者にとって自然への理解も不可欠です。私がハスの葉がもつ超撥水性(ちょうはっすいせい)に着目したのは、実際にハスの葉を見に行ったことがきっかけです。つまり、研究は自然の延長線上にあるのです。
自然と同じ高度な機能を再現することは難しく、苦労する面もありますが、人間にはなかなかまねのできない自然のすごみを理解できることがこの研究の魅力です。
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ハスの葉やホウセンカ、高度な自然の機能を光応答性物質で再現!
ハスの葉と同じ機能を光応答性物質で再現
ハスの葉に少量の水を落とすと、丸みのある水滴になって葉の表面を飛び跳ねます。葉の表面には微細な突起がびっしりと並んでいるので、水滴が突起と接触すると、表面張力によってはじかれるからです。
この凸凹構造は「ダブルラフネス構造」と呼ばれ、ジアリールエテンという光応答材料で人工的に再現できました。ジアリールエテンに紫外光を当てると赤や青の分子に変換し、これらが集まってハスの葉の突起のようなミクロンサイズの針状結晶が表面にでき、水をはじく超撥水性(ちょうはっすいせい)が発現します。可視光を当てると無色の分子に戻り、針状結晶も消失します。
自らはじけ散る機能も
光で色変化現象を示す「フォトクロミック化合物」であるジアリールエテン分子を用いて、光や温度の影響で結晶が成長し、色や表面構造が変化する「光応答性機能膜」を作成できます。これは、表面の濡れ性や細胞接着性を制御する光機能システムへの応用が期待されます。
この分子を利用した別の研究もあります。ジアリールエテン分子の一部の五角形の環を六角形に変えると、結晶が四角い筒状に成長し、これに紫外光を当てると、結晶が割れてはじけ散ることがわかりました。中に物を入れるとホウセンカの種飛ばしのような性質を示します。これに芳香剤を詰めると照明に反応して香り成分を放出したり、中に医薬品を入れて投薬し、人体の目的の場所で結晶を割って薬効を得ることも可能になるでしょう。
応用研究で機能性をアップ
最新の研究では、光の照射時間などに改良を加え、水滴を15cm上から落としても水をはじくような研究が進められています。15cmの高さから水を落としたときの衝撃は、実際の雨粒が落ちるときの衝撃とほぼ同等であることから、ハスの葉のもつ機能により近づいていくと言えます。
また、ホウセンカを模倣した研究も進展を見せており、筒状であった結晶をカプセル状にする試みがなされています。成功すればより密閉性が高まり、産業面へのさらなる応用が期待できます。
先生からのメッセージ
研究の世界では、表に出てくる結果の裏側に膨大なデータの収集と解析や数式計算があります。こうした地道な作業を繰り返していく姿勢が大切です。また、研究者にとって自然への理解も不可欠です。私がハスの葉がもつ超撥水性(ちょうはっすいせい)に着目したのは、実際にハスの葉を見に行ったことがきっかけです。つまり、研究は自然の延長線上にあるのです。
自然と同じ高度な機能を再現することは難しく、苦労する面もありますが、人間にはなかなかまねのできない自然のすごみを理解できることがこの研究の魅力です。
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