英語学習における「語彙意味論」の重要性英語という言語は、独特の語彙(ごい)体系を持っています。英語の構成を調べると、本来の英語の語彙が35%あり、そこに後から加わったフランス語由来のラテン語の語彙が35%あり、残りの30%はそのほかの言語の語彙で成り立っています。1つの単語には複数の意味があります。例えば、「get」を辞書でひくと8ページにわたって説明されており、すべて覚えるのは困難です。そこで、最大公約数的な意味を1つだけ覚えて、すべてをまかなう方法として「語彙意味論」や「認知意味論」の知見を使います。「get」の中核的意味たくさんの意味を持つ単語「get」の後には、名詞、形容詞、過去分詞、前置詞がきますが、すべて正体は同じで、「主語が何らかの状態を引き起こす」という形をつくります。
Max got angry yesterday.(マックスは自分自身に働きかけて怒るという状態にした)
Max got a new car yesterday.(マックスは自分自身に働きかけて新しい車を持つ状態にした)
「購入する」という意味が使用頻度としては高いですが、仮にマックスが泥棒なら「盗んだ」という意味になることもあります。このように同じ「get」でも状況によって意味は異なりますから、1つ中核的な意味を覚えることが有効なのです。映画観賞で語彙力を広げるより効果的な学習方法として、映画を英語字幕付きで観賞する方法があります。セリフとしての英語は、プロのスクリプトライターが考えた完璧な表現であり、その状況を表す超自然的な言い回しですので、物語の情景とともに、言葉を確かめることが大事です。例えば、『ダイ・ハード2』では、15秒間で「get」を用いた同じ表現が3回使われ、3回目だけ意味が変わります。このように、習った単語や表現を映画で確認します。これを繰り返すと、1つの基本動詞で多様な意味を表現できるようになります。英語学と実践を合体させることにより、飛躍的な英語の伸びを経験できるでしょう。
京都外国語大学
外国語学部 英米語学科
教授 倉田 誠 先生