この夢ナビTALKは英語翻訳されています。動画の右下の字幕のアイコンをクリックすると英語字幕が表示されます。
30分のミニ講義を聴講しよう! 医学を基盤とした栄養学のこれから
発酵食品や乳酸菌飲料は、私たちに豊かな食料を提供してくれます。でも、ヒトに食中毒などを引き起こす微生物もいます。腸内細菌叢はヒトにどのような影響を与えるのでしょうか? ヒトと微生物のかかわりを中心に、栄養学のこれからを一緒に考えましょう。
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう 近紫外線で殺菌する! ~食品衛生研究の最前線~

このうち感染予防研究では、食中毒などの原因となる大腸菌やノロウイルスなどの微生物をいかにしてやっつけるかがテーマです。その方法は、これまで熱や消毒薬、抗生物質などが主流でしたが、近年、食品を劣化させず、かつ残留物が残らない方法として、「光」の活用が注目されています。 UVAとUVCで違う殺菌の方法 殺菌力のある光というと、近紫外線(波長が380〜200ナノメートル)の中で最も短い波長域、UVCを使った殺菌灯が有名です。UVCはDNAに吸収されるのでそのエネルギーがDNAを破壊し、結果として微生物を殺します。しかし最近の研究で、近紫外線の中で一番可視光に近い領域のUVAにも殺菌力があり、UVCとは違う殺菌法であることがわかりました。
UVAが微生物のタンパク質に吸収されると、そこに酸化物質が発生します。すると酸化した物質が機能を失い、微生物を死なせるのです。UVCよりも即効性が低く、劣化作用の低いマイルドな殺菌方法と言えます。また、UVAの波長域は液体を殺菌するのに適している可能性も見えてきたことから、植物工場の溶液殺菌、さらには鶏舎の衛生管理への実用化が本格的に検討され始めています。 宇宙空間での活用にも期待 光は波長域で違う機能を持つことが明らかになったため、これらを組み合わせた相乗効果も期待でき、より殺菌力を高める研究も進んでいます。また、殺菌だけでなく、光によって特定の栄養素を増やした食物づくりにも関心は広がっています。
実は、こういった研究にはさまざまな光の制御が必須ですが、その背景にはLED技術の進歩があります。今後、宇宙空間での活用研究も活発になるでしょうし、その成果が気象条件の厳しい地上の砂漠などに応用されることも期待されます。
徳島大学
医学部 医科栄養学科
教授 髙橋 章 先生