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30分のミニ講義を聴講しよう! 生命(いのち)に学び、がんを治癒する。
生命科学とは、生命の営みを細胞・分子といったレベルで研究し、人の暮らしに役立てようとする学問です。がんとはどんな病気? がん細胞は正常細胞と何が違うの? 講義ライブでは、生命科学の視点でがんを学び、新しいがん治療の可能性について紹介します。
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう ナノ粒子を使ったがん治療薬の研究を、「再生医療」の分野にも応用

がん細胞と聞くと、恐ろしい細胞が突然生まれてくるイメージを持つかもしれませんが、実は私たちの体の中では、「がんの芽」と言うべき細胞がほぼ毎日のように作られています。ほとんどの芽は、免疫機能によって摘み取られているのですが、細胞分裂の過程でがん化の危険性がある細胞が発生するのは、避けようのない現象なのです。 カギはリン脂質のナノ粒子 せっかく新しい臓器を再生しても、そこからがんが発生しては元も子もありません。そこで現在、細胞を増殖させる段階でがんの芽を探し出し、本物のがん細胞になる前に消滅させてしまう研究が進んでいます。芽を探し出してくれるのは、リン脂質などから作られた「ナノ粒子」です。
これまでの研究で、がん細胞は正常細胞と比較して細胞膜の構造が乱れているため、ナノ粒子を吸着しやすいこと、ナノ粒子が集積したがん細胞は、内部で細胞死のシグナル伝達が発生し、自ら死滅することなどがわかっています。この仕組みを使ったがん治療薬の臨床実験が行われていますが、それを再生医療の分野にも応用しようというわけです。 がんの危険性が極めて低い安全な臓器再生 現在、肝臓細胞に分化させるための幹細胞とナノ粒子を使って、増殖中の細胞の中からがん化するかもしれない細胞をスクリーニングし、細胞死させる研究が進められています。肝がんは、細胞の性質が大腸がんや肺がんなどと似ているので、肝臓の細胞で技術が確立できれば、そのほかの臓器細胞の再生にも応用できるでしょう。
特定の臓器細胞になる前の未分化細胞、つまりiPS細胞の段階からスクリーニングが可能になれば、がん化する可能性が極めて低い、いわば保証付きの臓器再生が行えるようになるかもしれません。
崇城大学
生物生命学部 生物生命学科
准教授 古水 雄志 先生