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食品安全事故の法的対処からみる法文化の差異
法律は国ないし社会を理解する強力な武器です。というのは、国の権力構造や法体系、法文化が社会を形作るからです。例えば、近隣諸国の日本・中国・韓国で類似した事件が発生した場合、社会の反応が異なるのも法文化の違いによるものです。
先生からのメッセージ
法学は基本的に正義を求めていく学問です。でも「正義とは何か」というのは永遠の課題です。法学では、人間自体に尊厳があり、それを尊重し実現していくのが正義であると考えます。つまり正義というのは実に道徳的な考えで、それを守っていく制度的なものが法律なのです。
世の中に唯一絶対の正解はありません。その中でより正しい、あるいは最適解を求めていくのが法律の役割です。法学はある意味で楽しい、推理感覚で学んでいける分野なので、堅苦しく考えすぎず、楽しみながら正義を探究してください。
先生がめざすSDGs
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企業犯罪から見えてくる、日本・中国・韓国の権力構造や国民性の違い
同じアジアでも全く違う国民性
企業犯罪とは、文字通り企業が起こす犯罪のことです。企業犯罪に関して日本、中国、韓国の3カ国は、同じ東アジアの国でありながら、文化や国民性の違いから、その発生原因や法的対処は、それぞれユニークな特徴を表します。「食品偽装問題」を例に各国の企業犯罪の特徴を見てみましょう。
食品偽装が起こったら?
日本の大手企業が食品偽装にかかわった場合、まずは企業のトップが世間一般に向けて謝罪し辞任することが一般的です。そして、第三者委員会を作り、公平な事実究明を行います。これが韓国になると、ほんの一握りの財閥が大企業を経営し、絶大な権力を持っているため、偽装自体をもみ消すこともあります。その半面、国民の監視も厳しく、偽装が明るみに出た場合は日本より法的にも社会的にも厳しく糾弾されます。中国では、政権運営の支障にならない程度の食品偽装は問題にすらなりません。反対に、政治的な事件は厳しく処罰され、時には「こんなことで?」と思うような罪で死刑になることもあります。
法体系には国民性の違いが表れる
同じ事件でも国によって帰結がかなり異なるのは、その国の権力構造と法体系の違い、そして国民性の違いによるものです。中国では、権力が社会のあらゆる要素を支配しており、企業も例外ではありません。一方、国民性として、仲間内は信用しますが、他人は信用しません。韓国は財閥企業が経済を支配し、政権よりも企業の利権が優先されがちで、時には企業に都合のよい法律改正が行われることもあります。ただし軍事政権が長く続いたため、国民は大企業に迎合的な政権と大企業、両方に厳しい目を向け、監視します。日本は社会全体が大小さまざまな共同体で構成されており、閉鎖的企業体質が企業犯罪を引き起こすケースが多くあります。企業が国民の法意識の変化に対応できなかった結果といえます。
このように法律を通して、それぞれの国民性と法体系を比べると、その国の姿をよく知ることができ、日本社会を見直すきっかけを作ることにもなるのです。
先生からのメッセージ
法学は基本的に正義を求めていく学問です。でも「正義とは何か」というのは永遠の課題です。法学では、人間自体に尊厳があり、それを尊重し実現していくのが正義であると考えます。つまり正義というのは実に道徳的な考えで、それを守っていく制度的なものが法律なのです。
世の中に唯一絶対の正解はありません。その中でより正しい、あるいは最適解を求めていくのが法律の役割です。法学はある意味で楽しい、推理感覚で学んでいける分野なので、堅苦しく考えすぎず、楽しみながら正義を探究してください。
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函館大学
商学部 商学科
准教授 藤原 凛 先生