岡山大学 理学部 物理学科 教授 石野 宏和 先生

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宇宙ビックバンの前に迫る
宇宙のビックバンの前には宇宙空間の加速膨張であるインフレーションが起きたと考えられています。そのときに時空の量子的ゆらぎにより原始重力波が発生しました。この重力波をとらえることができれば、宇宙創成の謎にいっきに迫ることができるのです。
先生からのメッセージ
最先端の基礎物理学は、すぐには実生活に役に立たないことが多いです。しかし先人たちによって蓄えられたその知識は確実に生活に還元されています。例えばパソコンやスマートフォンなどの電子機器は、基礎物理学の知識なしでは動作しません。通信を行うための電波も、当初は発見者本人が「何の役にも立たない」と言っていました。つまり長い目で見れば、私たちの生活に直結しているのが基礎物理学なのです。また基礎物理学は、人類のみが持つ知的財産を増やす上でも重要な役割を果たしています。
先生がめざすSDGs
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この宇宙で最も古い光を探ってわかる宇宙の誕生と進化の謎
「宇宙の化石」から探る、宇宙誕生の謎
今から138億年前、宇宙は「ビッグバン」という現象によって誕生したと言われています。ビックバン直後は、非常に高温・高密度のエネルギー状態で、すべての光と素粒子がばらばらに動いていましたが、宇宙が膨張するにつれて冷えていき、38万年たった頃、原子が形成されました。このときに残された光が「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」というもので、現在も宇宙空間に満ちています。最近の定説では、ビックバンの前にインフレーションと呼ばれる宇宙の「加速膨張」が起こったとされており、その痕跡がCMBに残されていると考えられています。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測とは
地上から空を見ると、太陽が雲で遮られている場合があります。しかし、私たちは雲を通して太陽の光を見ることができます。このとき、光は雲の中で散乱し、雲の一番下まで到達した後は地上までまっすぐ降りてきています。つまり、このとき見ている雲とは、光が最終的に散乱した面を見ていることになります。CMBの場合は、138億光年向こうにある雲を観測しているのと似ていて、この雲のパターンにインフレーションの痕跡が残されています。
CMBを全天にわたって精密に観測するためには、宇宙空間において科学衛星を用いて観測する必要があり、国際的な枠組みで観測装置を開発しています。
宇宙は知らないことで満ちている
インフレーションという現象は、1980年代に理論構築されました。21世紀に入り、実験・観測技術が飛躍的に発展し、それを直接証明できる目途がたってきました。そのため、今現在提唱されているインフレーションモデルが正しいか間違いかもうすぐわかるでしょう。2020年代には、これまで未知だったいろいろな謎が解き明かされる可能性があります。これまで教科書に書かれていた「物理法則」をすべて書き換えてしまうような大発見があるかもしれません。
先生からのメッセージ
最先端の基礎物理学は、すぐには実生活に役に立たないことが多いです。しかし先人たちによって蓄えられたその知識は確実に生活に還元されています。例えばパソコンやスマートフォンなどの電子機器は、基礎物理学の知識なしでは動作しません。通信を行うための電波も、当初は発見者本人が「何の役にも立たない」と言っていました。つまり長い目で見れば、私たちの生活に直結しているのが基礎物理学なのです。また基礎物理学は、人類のみが持つ知的財産を増やす上でも重要な役割を果たしています。
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