九州工業大学 工学部機械知能工学科 教授 宮﨑 康次 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!ナノテクノロジーと熱工学
熱輸送を扱う熱工学は、暑い寒いといった身の回りの話から、コンピュータや自動車の高性能化など幅広い分野で必須となる学問です。近年著しい進歩を見せるナノテクノロジーを導入することで、従来の壁を破る熱制御が可能となっている最新の研究を概説します。
ふく射熱で車もポカポカ?
いい鉄の色は何色?
ナノテクで効率を上げる
ナノテクノロジーと熱工学
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみようナノテクノロジーで、真夏の暑さをエネルギーに変えられるかも?
エネルギーを使ってエネルギーを消す「ムダ」真夏の日中は、建物の屋根や壁が太陽光を受け、その「熱」が屋内に伝導することによって室温が上昇します。あまりに暑いと、エアコンを強くしてしまいがちですが、熱はまぎれもなくエネルギーの一種です。熱エネルギーを消すために、電気エネルギーを消費するのは非効率です。 熱を反射する屋根や外気温を伝導しない壁で家を建てれば、真夏でも快適に過ごせるでしょう。そんな夢のような素材が、ナノテクノロジーによって実現しつつあります。ナノスケールで起きる現象を物理的に解析物質をナノスケールで加工・制御すると、常識では考えられないような現象や反応が発生することは、何十年も前から知られていました。近年、それらの現象を物理的に解析できるようになったことで、熱工学の分野でも、ナノテクノロジーの応用研究が積極的に行われるようになりました。 熱の移動は「対流」「伝導」「輻射(放射)」に大別され、熱の伝わりやすさや熱容量は物質ごとに異なることを、中学校の理科で学んだと思います。しかし、ナノテクノロジーを用いて熱の移動の本質に迫ることで、既存の概念とは異なる熱特性を素材に生み出すことが可能です。化石燃料を使わなくても快適な生活が可能に熱を電気エネルギーに変える「熱電変換」の研究も進んでいます。これは、コンピュータCPUの冷却などに使われている「ペルチェ素子」の、電流を流すと熱が移動する反応を逆利用したもので、人工衛星の電源などで用いられています。また、特定の波長の熱輻射だけをさえぎったり吸収したりする「波長選択的輻射制御」も、太陽熱の有効利用で応用が考えられています。 石油などのエネルギー資源の枯渇が問題視されていますが、熱に関しては莫大な量のエネルギーが無駄になっています。熱工学とナノテクノロジーとの融合がさらに進めば、化石燃料をほとんど消費せずに、いまよりも快適な生活が実現するかもしれません。先生からのメッセージ
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