30分のミニ講義を聴講しよう! 細胞の骨格と動くしくみ
私たちの体をつくっている細胞の中には、タンパク質でつくられた骨格があり、細胞の形を支える梁(はり)や内部でものを運ぶレールになっています。さらに骨なのに細胞が動くための力まで発生します。講義ライブでは、この骨格がはたらくしくみを紹介します。
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう 細胞には骨格がある? 細胞は動いている?

細胞骨格は一種類ではありません。前と後ろの骨格の間には、骨格の部品を運ぶレールのような骨格があります。このレールは必要に応じて伸び縮みすることが可能です。また全体に網目状の骨格があって、細胞の形を保っています。この3種類の骨格が細胞の形や動きを決めています。 けがの傷口を閉じるときの細胞の動き 例えばケガをして傷口が開いた場合、表面の細胞は這い出してきて傷口を閉じようとします。1個の細胞に注目すると、進行方向後ろ側にある骨格が解体され前方に移動されて新たに骨格を作ります。その結果後ろが縮み、前がせり出します。一方で、近くでは細胞が分裂して新たな細胞も生まれます。このようにして、細胞が前に進み反対側の細胞とくっつき傷口が閉じるわけです。 医療にも貢献する細胞の動きの研究 細胞の移動が最も顕著に現われるのが、がん細胞です。がん細胞は増殖して広がるだけでなく、栄養を得るために自分の周りの組織を壊しながら血管に向かって進みます。細胞の動きが解明できれば、がん転移の仕組みがわかり、その抑制が可能になるでしょう。
また、脳の神経細胞は新たな神経回路を作るとき、神経細胞が細長く伸びてほかの神経細胞とつながります。これによって人間は新たな知識や思考を得ます。神経細胞の伸びが活性化する仕組みがわかれば、人間の学習機能を高めたり、認知症などの病気や老化を抑制したりできるかもしれません。
福岡大学
理学部 地球圏科学科
教授 中川 裕之 先生