ニュアンスの違いを知り理解を深める英語の習得は難しいと感じている人がいるかもしれませんが、単語や構文の意味をただ暗記するのではなく、論理も一緒に覚えることで理解が深まります。例えば、「must」と「have to」はどちらも「~しなければならない」という意味ですが、「must」は話し手に権限のある言葉で、命令の意味が含まれています。ですから相手によっては、「must」を使うと失礼にあたることもあるのです。一方、「have to」は客観的な状況を表します。
もう一つ例を挙げてみましょう。「Can I~?」と「May I~?」では「May I~?」の方が丁寧な表現ですが、なぜでしょうか。それは、「may」が目上の人に許可を求めるときに使う言葉だからです。一方、「can」は対等の関係にある相手に使います。英語は相手を立てる言語英語の習得は、表現するときの「視点」や「発想」を合わせて理解することでも、より面白くなるでしょう。
2つの例をみてみましょう。1つは、英語は相手を立てる言語だということです。状況によって変わることもありますが、自分と相手を指すとき、日本語では「私とあなた」と表すことが多いのに対し、英語では「You and I」と「あなた」を先に言うことが多いのです。英語は結果を重視する言語もう1つは、英語は「結果」を重視する言語だということです。仮に機嫌のよくない友だちに、「何を怒っているの?」と尋ねるとします。日本語では、「経過」を重視するため、「怒っている」という状況の変化を表します。これに対し英語では、既に怒りに達しているという「結果」を重視するので、「Why are you mad at something?」のような表現になります。つまり、そこにたどり着くまでの経過が強調されるのが日本語、結果を強調するのが英語というわけです。このように視点や発想の違いで、言語表現は変わってくるのです。
名桜大学
国際学群 語学教育専攻
教授 中村 浩一郎 先生