大阪医科薬科大学 医学部医学科 輸血室 准教授 河野 武弘 先生
30分のミニ講義を聴講しよう!現代の輸血を支えるヒトと医学
内科、外科などあらゆる診療科で行う輸血を安全に実施するには、基礎医学と臨床医学を総合的に応用する必要があり、その過程にはさまざまな医療職が携わっています。献血がないと助からない命に向き合う日々を過ごす輸血責任医師が、その概要を紹介します。
輸血ができるようになるまで
現代の輸血を支えるヒトと医学
先生からのメッセージ
夢ナビ講義も読んでみよう命を救う輸血「血液はまだか!」
血液の大切さを実感する「血液はまだか!」。医療ドラマなどで医師が叫び、輸血用の血液の到着を待っているシーンがあります。でも実は、出血の最初の段階では、ある程度なら輸血ではなく輸液で治療を開始します。しかし、輸液の成分には、酸素を運搬するという大切な役割を持つ赤血球は含まれていません。赤血球が、体のすみずみまで酸素を運んでくれるので体内の細胞や組織は生きていけるのです。ですから、出血量が多くなると、酸素を運ぶ赤血球の濃度が薄くなり、心臓や脳が動かなくなって、危険な状態になってしまいます。やはり最終的には輸血の出番なのです。 輸血用の血液は24時間体制で赤十字血液センターから医療機関に届けられています。緊急時には、赤色灯を点灯させサイレンを鳴らしながら、血液運搬車が医療機関に急行しているのです。おとなしい子羊の血ならOK!?世界ではじめての輸血は1667年。フランスのドニが子羊の血を人間に輸血しました。ドニはなぜ子羊を選んだのでしょうか? おとなしい子羊の血液が人を穏やかにすると考えたからという説があります。ところが、羊の血を使っての輸血がうまくいきそうに思えたのは最初だけでした。血液型の概念がなかった時代のことで、副作用などいろいろな問題が生じたのです。その後、1901年にオーストリアのラントシュタイナーがABO式の血液型を発見し、血液型を合わせることで輸血を安全に行えることが明らかになりました。輸血は臓器移植臓器移植と聞くと、心臓や腎臓などの移植と思いがちですが、輸血も血液という他人の体の成分を体内に入れるのですから、実は臓器の移植と同じと言えます。ですから、輸血で用いる血液と、輸血を受ける患者さんの血液の相性を調べることは、とても重要なのです。現在は、血液型を合わせることはもちろん、副作用や安全性についても、さまざまな検査をしてから輸血を行います。 緊急の輸血の場合は、検査も時間との戦いになります。速やかで間違いの無い検査技術と、冷静で臨機応変な判断能力が必要になります。先生からのメッセージ
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